奈良市が独自の民泊条例案を発表
2018年1月17日、奈良市の仲川げん市長は民泊に関連して「(仮称)奈良市住宅宿泊事業の実施の制限等に関する条例骨子案」を発表しました。奈良市は1月19日から2月9日の期間に市民からパブリックコメントを募って骨子案を整え、3月に開かれる定例市議会に条例案を提出する予定です。2018年6月15日施行が決まっている住宅宿泊事業法(民泊新法)を前に、一定の規制を設けることで民泊事業による周辺住民の生活環境悪化を防止することを、条例制定の目的としています。
民泊新法が施行されると、旅館やホテルを建てることが法律で禁止されている閑静な住宅街においても、民泊の営業ができるようになります。また、旅館業法上の許可を得ていなくても、一定の要件を満たせば、届出により半年未満(180日以下)の年間営業日数が認めらます。
大胆な規制緩和をする一方で、民泊新法18条は「条例による住宅宿泊事業の実施の制限」の項目を設けており、都道府県または一定の要件に該当する市が条例により区域を定めて営業日数を制限できるとしています。つまり、国の法律に上乗せして条例で民泊を規制することを認めていることになります。
今回奈良市が発表した条例骨子案では、①観光シーズン平日の住居専用地域、②平日の学校や保育所等の敷地の周囲100メートル以内、③観光シーズンの歴史的風土特別保存地区、④観光シーズンの奈良町周辺地域の営業を禁止または制限しています。観光シーズンの営業が制限される理由は、民泊に頼らなくても既存のホテル・旅館によって観光客の需要をカバーすることができるからだ、というのが奈良市側の説明です。
古都保存法に基づく「歴史的風土特別保存地区」は、歴史的風土の保存が特に必要な重要地域が指定されます。奈良市の場合は、唐招提寺・平城京跡・聖武天皇陵・薬師寺などが含まれます。
民泊にホストが同居している家主同居型の場合や、民泊施設と管理事務所が近く(片道2キロメートル未満)、トラブルに迅速に対処できるような環境が整っている場合は、営業日数の制限対象から外れます。
条例案には規定に違反した民泊事業者に対する罰則規定が設けられています。また、奈良市は民泊施設になっている住宅や、民泊事業者の連絡先等の情報を公表する方針です。全体的に民泊事業者にとって厳しい内容になっているため、国会が定めた民泊新法の趣旨を逸脱する規制になっているとの指摘があります。